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勇者を継ぐには未だ幼い僕だから

2008年04月12日 00:54


 決して届かない理想の果て、敵と共に果てる者。
 慟哭―― 血煙と幾万と積み重なるだけの屍の上。剣を天にかざし、神をなじる者。何時だって手遅れ、焼け爛れた村のかまどの中。鮮やかな頬のまま眠るように息絶えた赤ん坊を、無言で埋葬する者。背中合わせで戦いながら、誰よりも平和を望みながら満たされぬ者。
 私の父が、語って聞かせたヒーロー。勇者 (英雄) の話。

 こんにちは、レンです。ふと、未だ家族と一緒に暮らしていた時、父が話してくれた 『勇者の話』 を夢に見ました。何処か遠い目をしながら、まるで見てきたみたいに話す父。あまりに悲壮なその姿に、幼いながら衝撃を受けたのか、泣きながら父に抱きついた覚えがあります。

 もっとも、当の父は母さんにボコボコにされてましたけど……

 冒険者の宿から、姉妹それぞれ別れて西地区王立病院に向かう途中。振り返ってファーレンに来てからの生活を思うと、そこまで悪いものでも無く、仲間に恵まれ未だ決定的な一歩を超えてない事に気付きました。仏領インドシナから南北ベトナムに至るような現代風の "本当の戦争" も、過去数百年に渡って繰り返されたであろう剣と火砲による "本当の戦い" も…… 体験してすらいない。もし、この国が万を超えるモンスターに押し入られた時、私は戦えるだろうか? 武器を持つ手が力を失ってしまうのではないか。その時、そうその時は。

「レンレン! おはようっ」
「レンさん、おはよ。立ったまま寝てないかい(笑」

 肩を叩いて、紅茶片手に元気そうなMさん。同じ世界から先にこっちに来た親友のKさん。次々と集まるギルドの仲間。幼いながら魔術の才で戦う魔法幼女、寡黙な青年兵士―― ああ、愚問だった。彼等がいる限り、きっと私は戦える。恥ずかしい事を考えていた事を隠すように、いつもの私が。
「皆、おはよう~」
 そんなある日のことでした。

勇者捜索隊 隊長 トカマクの失踪。戦士未だ帰還せず――


 試練の回廊、未だ戸惑うばかりの私たちと一緒に歩いた柔らかな笑みを浮かべる彼女。その彼女が失踪したと言う、皆の視線が鋭くなりました。勇者捜索別働隊、勝手にそう名づけられた私たちですから王宮召喚士から呼び出されるのも当然の事だったのかも知れません。

続きは下のリンクから
 慌てて、勇者捜索隊の詰め所に行くと早速ゲイツさんと面会することに。ちなみに、覚えていない方も多いと思いますが、この人こそ拉致実行犯―― もとい、私たちをこの世界に召喚した召喚士です。ちっとも悪びれない白々しさ、時折鋭く光る瞳は何処か狸を思わせる老人です。


漫才する為にきた訳ではないのですが……


 聞けば、随分前から彼女は隊から離れてしまっているとの事。それが単独行動なのか、はたまた脱走なのか分からないと、彼も相当困惑しているようでした。私達も心配なんですと告げて早速捜索に当たることにしました。
 最悪、彼女の遺体だけでも捜索隊に届けなければなりません。シビアなミッションがスタートしました。それに当たって、私達の中で手が空いていたメンバーでトカマク捜索隊を結成です。

 私を除いて、仲間は頼りになる人ばかり――
 弓術士のMさん、親友のKさん、魔法幼女Asさん、彼女のパートナーYhさん。

 途中、マロリーとか言うトカマクと同じ部隊に所属する子から、ファンブルグから西に行ったところで彼女を見たという話を聞きました。何故追いかけなかった、とは聞かなかった。彼もまた、苦虫を噛み潰しているような顔をしていたから。


つるっと滑ると、穴に落っこちました。


 そこは、魂まで凍ってしまいそうな洞窟でした。絶えず誰かに見られているような気配、そして言い知れぬ嫌な予感。やがて進んでいった先、うっすらと光が見えたのです。

「これは、すごいね」

 目の前に広がったのは、現代では失われてしまったであろう魔道の粋を集めた何かの施設のようでした。そして、私たちは変わり果てた彼女を目撃するのです。


一体どんなクスリをやったのでしょうか?


 今回のリーダーであるKさんが、彼女に話しかけると、なにやらブツブツ言っています。例えば、殆ど人の気配がしないここで何ヶ月も一人で生活していたとしましょう。だとすれば、こうなってしまうのも仕方ないのかも知れません。

「これはもうだめかもわからんね……」

 Mさんが悲しそうに呟いたちょうどその時でした。


一体、どんな暴行を受けたんでしょうか、心配です



 我に返ったトカマクさん。なんとしても止めなければとか、闇の書の防衛システムがとか、和平を実現できなければまた子供が死ぬことになるとか…… ワケの分からない事をさえずりながら遺跡の奥へ走っていってしまいました。

「ねぇ、みんなどうする? 何か萎えちゃったから、遺跡ごと吹き飛ばしちゃおうか」
 魔法幼女がトンでもない提案を持ちかけます。前に風夏姉さんが、管理局の白い悪魔と言う絵本を見せてからと言うもの肉体言語を駆使するようになりました。そんな事より筋肉だとかKさんが言っていますけど、皆トカマクこと彼女が無事で気が抜けたのかも知れません。

「でも、大抵このパターンって強大な魔獣とかそういうパターンですよね?」
 ぼそりと呟いたYhさんの言葉に一同に緊張が走ります。この遺跡が何であれ、秘匿され続けていたと言うことは、当然隠すだけの理由があると言うことなのです。私たちは走ります、だとすれば彼女が一人で立ち向かうのは無謀かも知れないからです。


複雑な魔力演算装置が並びます


 追いかける私たちの前に立ちはだかる魔道ロボットや、ガス状のガーディアン。切っては払い、魔力で押しのけ、たどり着くと…… あまり思い出したくないのですが、驚くべきモノが!


虚ろな雰囲気を纏う赤髪の男性……
そして、なんですかあのうなぎは?!


 燃えるような赤い髪。私たちの存在を無視するように、封じられていたであろう "うなぎ" に話しかける彼。誰もが口を紡ぐ中、男は古代の魔物を私たちにけしかけてきたのです。

 ところで、告白しなければならないのですが。私こと、レンはヘビ全般が嫌いです。当然ふよふよと舞っているそれは明らかに、にょろにょろとしておりまして……

 全力全壊!

 何があったかは想像にお任せしたい所ですが、うなぎを倒した私達。そして、彼女と燃えるような髪の男。一触即発の空気の中、彼が言い放った一言は血塗れ、慟哭し幾つもの無念に彩られていた。そんな気のする一言でした。


それを言っちゃおしまいですよ……


 あれこれあうあうしてるトカマクさんは、放っておいて帰る事にしました。まぁ、どうせ お腹が空いたら帰ってくるでしょうし 幼女にも身に覚えがあるらしくしきりに 「うんうん」 と頷いています。帰り道でふと、仲間の背中を見ながら思ったのです 『勇者になるにはまだ幼すぎる』 そんな事を。

 ただとりとめもなく。
 僕らは手をつないで、歩いていこう―― と。
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